All The Beauty And The Bloodshed

ローラ・ポイトラス監督によるアカデミー賞ノミネート映画『All the Beauty and the Bloodshed』は、国際的なアーティストでありアクティビストであるナン・ゴールディンの人生に深く結びついた、壮大で感情的な物語です。インタビュー、写真、映像といった多様なアーカイヴを通じて語られるストーリーの中心は、1990年代の後半からアメリカで深刻化したオピオイド問題 - 中毒や過剰摂取による死亡者数の急増 - という社会問題に対するサックラー家への責任を問う、ナン・ゴールディンの個人的な戦いの記録です。この映画はアートとアクティビズムは一体であるという彼女の信念の基に、白熱した生命への讃美と、生命を脅かす者への非難に深く切り込んでいます。

ナン・ゴールディンの過去と現在を織り交ぜるのに役立っているのが、彼女の個人的・政治的闘争をサウンドトラックで表現し、崇高な効果を上げているアーティスト、サウンドウォーク・コレクティヴです。サウンドウォーク・コレクティブは創設者でアーティストのステファン・クラスニャンスキとプロデューサーのシモーネ・メルリによる２人組のアーティスト。現代音響芸術のプラットフォームとして活動し、アーティストやミュージシャンを起用しながら、コンセプチュアルで、文学的な、あるいは芸術的なテーマを検証するために、その場所や状況に特化したサウンド・プロジェクトを創作しています。『All the Beauty and the Bloodshed』では、ザカリアス・ファルケンベルクとヨハネス・マルファッティとのコラボレーションによる楽曲で、優美さと狂気の間で揺れ動くトランスを生み出しています。

クラスニャンスキはこの楽譜の中で、施設に閉じ込められ社会から隔絶されたドイツの詩人フリードリヒ・ヘルダーリンの生涯と作品とのつながりを描いています。精神病に悩まされながら断片的に書かれた最後の詩の中で、ヘルダーリンはその儚さと刹那性をもって自然を表現しました。同じようなテーマは、ローラ・ポイトラス監督によるナン・ゴールディンのポートレートに融合し、サウンドトラックの中の合唱曲やカントゥスの構成のインスピレーションとなっています。楽曲は、言葉の反復と声の重なりによって、神聖な音楽から現代のミニマル・ミュージックまで、さまざまなスタイルを響かせながら、まるで何かに憑依された言語のように奏でられます。震えるような弦楽器とうねり、脱調と余韻、超現実的な変化を特徴とした音楽はさまざまなリスニング体験を生み出してくれます。全体のうち２曲ではナン・ゴールディンのナレーションがフィーチャーされており、彼女の力強いボイスは、より直接的で没入的なストーリーテリングを提供しています。

ローラ・ポイトラス監督は『All the Beauty and the Bloodshed』の中で「抗議」こそがナン・ゴールディンの偉大な芸術作品であることを示します。ローラ・ポイトラス監督とナン・ゴールディンは「アートは世界を変えることができる」ことを力強い結果とともに私たちに伝えてくれます。この驚くべき映画には、映画全体を貫く複数の糸が存在しています。そしてサウンドトラックは、その糸の流れを把握するのに役立つ「音のアイデンティティ」を提供しています。サウンドウォーク・コレクティブは、ナン・ゴールディンの個人的な苦悩を、文化を揺るがす衝撃へと変換することに成功し、観客の心をつかむ思慮深いスコアを創り上げています。