What does “Analogue” Mean to You?

Leon Michels

“アナログはプロセスなんだ。制限を与え、同時に僕の作曲方法も左右する。”

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Profile

Leon Michels

マルチ・インストゥルメンタリストであり、エル・ミシェルズ・アフェアー (El Michels Affair)のバンド・リーダー。1990年代後半からニューヨークでプロデューサー、ライター、アレンジャー、セッション・ミュージシャンとして活躍。Soul FireやDesco Recordsからのリリースに貢献した後、Big Crown RecordsとTruth & Soulを共同設立。Diamond Mineの共同オーナーであり、Diamond Mine Northの単独オーナーでもある。

ポップ界の上層に詳しい人なら、ビヨンセとジェイ・Z、 アデル、ラナ・デル・レイなどのレコーディングにレオン・ミシェルズがプロデュース、ソングライティング、演奏で参加しているのをご存知だろう。このようなコラボレーションへの道は、ニューヨークのインディペンデント・ミュージック・コミュニティーで、マルチ・インストゥルメンタリスト、バンド・リーダー、レーベルやスタジオの経営者として尊敬を集め、長年にわたって活動してきたレオン・ミシェルズのキャリアの基盤の上に築かれたものだ。シャロン・ジョーンズやリー・フィールズといった遅咲きのスターを輩出した90年代後半から00年代初頭のニューヨークのディープ・ファンク・リヴァイヴァル・シーンでギグを始めたとき、レオン・ミシェルズはまだ高校生だった。卒業後彼は自身のソウル/ファンク・インストゥルメンタルバンドを結成し、アトモスフィカルなニューヨークの街のサウンドトラックと言えるような音楽性で注目を浴びた。

アロー・ブラックが経済的援助を切に願って歌う『I Need a Dollar』でソウル・ポップの大ヒットを共同プロデュースし、リー・フィールズとの継続的なコラボで美しい作品に磨きをかけ、ウータン・クランのインストゥルメンタルの再解釈、ヨーロッパのライブラリー・ミュージックへのオマージュ、ヴォーカリストのピヤ・マリクをフィーチャーした南アジア風のサイケ・ファンクなどの作品でバンドをリードしている。また、2016年からパートナーのDanny Akalepseと運営しているインディーズ・レーベル、Big Crown Recordsと契約しているアーティストたちとともに、ムーディーなドリーム・ポップ(The Shacks)、ルーツ・レゲエ(Liam Bailey)、ネオ・ソウル(Lady Wray)にもプロデュースの手を広げている。Diamond Mineスタジオ(彼がトーマス・ブレネック、ホーマー・スタインウェイス、ニック・モブションと共同経営する制作拠点)でのセッションの合間に、レオンは音楽をテープに録音するコツについて語ってくれた。

01

Analugue is...

アナログは何よりもプロセスなんだ。僕にとってアナログの機材は、基本的にどうやって音楽を作るかを左右するものであり、デジタルよりも機械に頼って音を仕上げることにつながるものだ。

アナログとは?

簡単に言うと、アナログは何よりもプロセスなんだ。もっと長い答えにするなら、僕にとってアナログの機材は、基本的にどうやって音楽を作るかを左右するものであり、デジタルよりも機械に頼って音を仕上げることにつながるものだ。アナログ機材は制限を与えるものだけど、同時に僕の作曲方法も左右する。もし僕がアナログ機材で行ったあるプロセスによって、超ローファイでクランチサウンドのドラムが作れたとしたら、それによって曲の残りの部分をどうレコーディングするか、そして最終的に曲をどう作るかの判断に影響していくんだ。

それは、僕がたくさんの音楽を聴いて、音とスタイルを結びつけているからだと思う。本当にクリーンなサウンドが録音されていると…例えばドラム・ビートとかがそうだと、それがどんなに優れたドラマーのものであっても、うんざりしてしまうことがあるんだ。むしろそのサウンドに個性や何らかの「欠点」がある方が好きだね。このようなアプローチは、音楽の世界ではすでに存在していたんだ。 ニール・ヤングのプロデューサーのデビット・ブリッグスもそうだったし、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドもそうだった。ダーティな録音には特有の個性があるんだ。

02

The Beginning

デジタル・レコーディングは、録音された音楽に存在する高音域をできるだけ出すように設計されているんだけど、古いアナログ機器には、高音域を削り取るEQが内蔵されているものが多いんだ。

そのようなアイデアを実現するために、どのような機材が最適だと考えていますか?

あらゆる種類のテープを使っているよ。8トラックの1インチが多いね。昔ながらのカセットテープを使った処理もたくさんやってる。基本的に僕の機材は、僕が使っている方法では1つのことしか行わない。自分の機材をフルに活用できているとは思ってないけど、カセット・マシンが好きなのは、基本的に高音域を削ぎ落とすEQカーブを持っているからなんだ。デジタル・レコーディングは、録音された音楽に存在する高音域をできるだけ出すように設計されているんだけど、古いアナログ機器には、高音域を削り取るEQが内蔵されているものが多いんだ。

では、どのようにカセット・レコーダーを使うのですか?

リズム・トラックが4~8トラックある場合、あるいは曲全体が4~8トラックある場合は、基本的に4トラックに分割して録音する。4トラックのカセットしか持ってないからね。それをカセット・マシンにフラットに録音するだけだよ。

でもそのおかげで、最近気がついて、やっていることがあるんだ。これはちょっと遅れた発見なんだけど、僕の音楽の録り方をちょっと変えてしまったんだ。ウータン・クランの2枚目のアルバム『Return to the 37th Chamber』のカバーバージョンを作っていたときのことなんだけど、サンプリングされたヒップホップの中のソウル・ミュージックのサウンドを好きな理由の1つは、(サンプルの)スピードを落としたり速くしたりする操作から生まれると気づいたんだ。そうすることで、そのプロセス特有のエフェクトが生まれる。だから、テープを使って曲を速くしたり遅くしたりすることは、最近よくやっているよ。

Diamond Mineでレコーディングするときの典型的なワークフローやルーティンはありますか?

スタジオでの標準的なルーティンは、誰かが持っている曲か、誰かが持っている基本的なアイデアがあって、ドラム、ベース、ギター、または何らかのキーボードから始まり、エンジニアが8トラック1インチのMCIのマシンに録音する。そうやってすべてが始まるんだ。そしてコンピューターに移すか、テープ・マシンに残すか、別のテープ・マシンに移すかは状況によって変わるね。でも、この6年間、Diamond Mineスタジオから出たものはすべて同じマシンで録音されているんだ。

楽器に関してですが、どの楽器がテープ録音による恩恵が一番大きいと思いますか?

僕にとってはいつもドラムとベースだね。それ以外はデジタル録音でも問題ないし、そのほうがいいときもある。ボーカルのある曲では声がとても鮮明になるしね。音楽はアナログのような雰囲気になるほうがクールだと思うこともあるけど、少なくとも僕の耳には、あまり違いがわからない。多くの人が僕に異議を唱えるとは思うけどね。

ボーカルのある曲では、ですか?

ああ、ボーカルでもそうだし、ギターでも適切なアンプと適切な奏者であればね。中音域の楽器では、アナログ録音でもデジタル録音でもそれほど大きな違いは感じないんだ。でも、ローエンドとハイエンドは、アナログの機材とプロセスが最も重要だね。

03

About Music Creation

アナログがレコーディングやミキシングに適している別の理由として、音楽を作るのと同じくらいにパフォーマンスが重要だということを挙げたい。

あなた自身は特にアナログ通ではないと認めているわけですが、他のどのような部分で「違い」を生み出していますか?

最初の質問に戻るけど、すべてはプロセスなんだ。テープだけでレコードを完成させたのはいつが最後だったか思い出せないな。だって本当に面倒なんだから。リー・フィールズのボーカルをテープでトラッキングしていた頃を思い出すよ。最低でも6時間はかかった。なぜなら、あるラインを録ると、リーは 「もっとうまくできる 」と言うんだ。だから彼を信頼して、もっとうまくやりたいと思うんだけど、そうすると(何度も)テイクを重ねることになる。だから、そういう意味ではデジタルは救世主だよね。

自分の音楽や音楽全般において、本当に重要だと思うことであり、アナログがレコーディングやミキシングに適している別の理由として、音楽を作るのと同じくらいにパフォーマンスが重要だということを挙げたい。アナログだと、音楽をレコーディングしているときに選択肢が多すぎたり、それゆえに時間がかかりすぎるということがない。不必要なほどに多い選択肢は取り除かれるんだ。ライブで曲を演奏する場合に、決断が必要なのと同じだよ。リー・ペリーみたいにね。すべてが超高速で起こる。そして、レコーディング中に、まったく正気の沙汰とは思えないような決断を下すこともあるんだけど、その決断が音楽をより面白いものにしているんだ。

ご自身の作品で、そのような決断の具体例はありますか?

例えば『Special Night』に収録されているリー・フィールズの「Make the World」をレコーディングしたときがそうだね。あるテイクを録った後、別の曲に移ったんだけど、そのときのテイクは消されちゃったんだ。でもラフ・ミックスがあったから、そのラフ・ミックスを結局リズム・トラックとして使うことになった。でも僕にとっては、このミックスはベスト・ミックスのひとつだったんだ。それから、ミックスの中でタンバリンが一番大きく音が鳴っているみたいなバカげたことをわざとすることもある。そういう部分が、(自分が聴く)レコードの中で一番好きな部分だからね。ほら「なんでこんな風にしたんだろう?」って思うようなレコードってあるでしょ?

リスナーとして、他にどのような例からインスピレーションを受けましたか?

これはミスと言うべきかどうかはわからないけど、ただ、おそらくかなり早く決断されたのだろうという曲があって、リー・ペリーの 『Blackboard Jungle Dub" [Version 2]』という曲がそうだね。ベース、ドラム、ギター、ピアノなど、すべての音楽が右にパンされ、トロンボーンだけが左にパンされているんだ。この曲は何度も聴いたんだけど、一度だけスピーカーの故障で片チャンネルのまま聴いてたことがあったんだ。そのときトロンボーンだけ聞こえてこなくて、そのとき初めて気づいたんだ。あまりにいい音だったから、あんな風にパンニングされているなんて考えもしなかった。でも、それは完璧な決断のようでもあった。ただ、考える時間があれば、ほとんどの人はそんなことはしないだろうね。

だから私たちのほとんどはリー・ペリーではないのでしょうね。

そうだね。彼の言葉に「音楽は即座にインプットされるべきで、アウトプットすべきではない。神の力とクソが通り抜けるようなものだからだ」というようなものがある。僕はそれが大好きなんだ。ジャズの即興演奏のようなもので、音楽のレコーディングにも同じようなことが言えると思う。レコーディングのクールな部分としてね。

それはニューヨークのソウルやファンク・シーンに入り始めた頃の、あなた自身の経験に通じるものがあると感じますか? Gabe Rothや(DescoとSoul Fire Recordsの共同設立者)Philip Lehmanのような人たちと「shitty is pretty(クソなものはかわいい)」という美学を共有していたように思いますが。

最近、Soul Fireの古いリールをデジタル化しているから、そのことをよく考えているんだ。でもね、古いリールを聴くと、本当にひどい音楽もあるんだ。でもPhilipは気にしなかった。彼はただ音楽を録音したかっただけなんだ。彼は最悪で聴くに堪えないようなクソを好むこともあった。でも、それはパンクロックの精神みたいなものでもあるから、とてもクールなんだ。自分が感じていることを何でも録音して、レコードにしてるんだ。

あの時、シーンの人たちはローファイに熱狂していたのだからおもしろいですね。温かみのあるアナログでというより、生々しいアナログだったと言えると思います。

そうだね。特に僕たちが大好きなレコード、たとえば本当にディープなソウルのレコードは素晴らしいし、何千ドルもの価値があるよ。そういうレコードがどうやって作られたかというと、150ドル集めてスタジオを1時間借りて、そのスタジオにいたミキシング・エンジニアが5分でミキシングしたものだったりするんだ。これがレコードのストーリーの一部であり、そうしたサウンドがクールな理由でもあるよね。

そのことを忘れずに、音楽を貴重品のように過度に大切に扱わないようにするのは大事なことですね。

まさにそうだね。音楽を貴重品のように過度に保護することは、人々をクラブから締め出すものになりうると思う。アビーロード・スタジオのような場所では、みんな白衣を着て、手袋をしてマイクに触らなければならなかった。専門性が必要だからね。特定のサウンドを求めるのであれば、それは必要なことなんだ。でも、ただマイクをつないでゲインを上げて、サックスのベルにつっこんで、どんな音が鳴るのかを聴くことだってできるんだよ。

文 : Jeff Mao
写真 : Sesse Lind, Yesenia Ruiz, Diamond Mine.

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What does “Analogue” Mean to You?

In Conversation With Russell Elevado Hosted By Eric Lau

“すべて変わっていく。それを守るためにアナログ・ファウンデーションがあるんだ。”

ニューヨークを拠点に活動するレコーディングエンジニア/プロデューサー。 唯一無二のアナログサウンドで知られ、今もなおテープを録音媒体として使用する数少ないエンジニアのひとり。

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